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さが美の売却先決定

またもや、日本の株式市場の未来に影をさすような出来事が起きました。まずは、2016年10月12日付日経新聞(一部抜粋)をご覧下さい。


ユニー・ファミリーマートホールディングスは11日、保有する呉服店子会社さが美の株式を投資会社アスパラントグループ(東京・港)に売却すると発表した。投資会社のニューホライズンキャピタル(同)が「より高い価格で買い取る」と表明していたが、ユニー・ファミマHDは売却先の変更で生じるコストや信頼関係を理由に提案を退けた。

ニューホライズンの安東泰志会長兼社長は同日の記者会見で「提案拒否の理由に同意できないが、しかたがない」と述べ、争奪戦は決着した。

アスパラントがさが美にかけたTOB(株式公開買い付け)への応募は11日が期限。TOB価格は1株56円と東証終値(125円)を下回り、さが美株の54%を持つユニー・ファミマHDからの取得を想定していた。

一方のニューホライズンは昨年12月、さが美株の一部を75~100円で買い取る提案をした。それがアスパラントへの売却が今年8月に決まったため、対抗策として9月23日に70円での買収を提案。さらに30日に90円に引き上げていた。


あなたが、ユニー・ファミリーマートHDやさが美の株主だったら、この一連の出来事をどのように考えるでしょうか。自分の持っている株を90円で買うという人が現れたのに、当初の予定通り、56円で売りますということを勝手に決められたということなのです。

このような経済合理性からかけ離れたことが行われることが信じられません。ただ、ここで問題になるのは、その理由です。

ユニー・ファミリーマートHDは、2016年10月11日付「株式会社さが美に対する公開買付けに関するお知らせ」で、その理由を以下のように説明しています。


平成28年10月11日開催の取締役会決議において、同日現在ニューホライズンキャピタル株式会社又はその関係者による公開買付けが現に開始されておらず近い将来にこれが開始されるとの見込みもないこと、同社とさが美の経営陣との間で十分な信頼関係が構築されていないことその他の諸状況を総合的に判断


これを受けて、ニューホライズンキャピタルは、平成28年10月11日付で「株式会社さが美の普通株式及び貸付債権の譲受けについて」をリリースしています。

これを読むと、同社とユニー・ファミリーマートHDや株式会社さが美との間では何らの実質的な協議の場が設けられることがなかったこと。そして、結論やその結論に至った理由についても同社に対して一切通知がなされないまま、先述のユニー・ファミリーマートHD によるプレスリリースが発表されたことがわかります。

また、今回の提案は、債権譲渡とセットであることから公開買付けには、ユニー・ファミリーマート HD と被買収会社であるさが美の同意が必要であることがわかります。

したがって、両社の同意がない中、公開買付けができるはずもないことから、先の「同日現在ニューホライズンキャピタル株式会社又はその関係者による公開買付けが現に開始されておらず近い将来にこれが開始されるとの見込みもないこと」というのが理由になっていないことがわかります。

もうひとつの理由、「同社とさが美の経営陣との間で十分な信頼関係が構築されていないことその他の諸状況」ってなんでしょうか。これで説明したことになるのでしょうか。ニューホライズンキャピタルは、今年の8月に今回の提案が採用される前、昨年の7月、12月の時点で今回の提案よりも優位な条件でさが美やユニー・ファミリーマートHDの取締役に再生提案を既に行っていたのです。

ここで考えなくてはいけないのは、ユニー・ファミリーマート HD の企業価値向上の観点から、ひいては、子会社であるさが美の企業価値向上の観点からどちらの提案が望ましいかということです。

この説明では、90円で買おうというニューホライズンキャピタルをけって、56円でアスパラントグループに売却する理由を十分に説明したことにはならないでしょう。これで、うやむやに終わってしまうのでしょうか。

ニューホライズンキャピタルが言う通り、本件が日本企業のコーポレートガバナンスの悪しき前例とならないことを祈るばかりです。

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