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コベナンツ開示義務化、金融庁の新方針

2023年7月19日の日経新聞によると、金融庁が企業が融資を受ける際に設けられる財務制限条項(コベナンツ)の開示を求める方針を打ち出しています。コベナンツは、債権者が債務不履行リスクを低減するために設ける契約条項で、企業に対して一定の財務指標値を維持することを求めます。万一これらの条項に抵触した場合には、債権者は企業に対して借入金の即時返済を要求できます。

一見すると、企業活動の制限あるいは禁止の性格を持つこれらの条項ですが、コベナンツによって債権者からは、企業の信用リスクが低下すると見なされ、結果としてより低い利率で資金を借り入れることが可能になる場合もあります。

日本企業と米国企業のコベナンツの開示例(2004年~2013年の公開データ)を見てみると、日本では純資産維持・利益維持条項が顕著に多い一方、米国では有利子負債キャッシュ・フロー倍率とInterest Coverage Ratio(ICR)の利用頻度が高いことがわかります。ちなみに、有利子負債キャッシュ・フロー倍率は、「有利子負債 / (当期純利益+減価償却費+他の非現金支出項目)」、ICRは、「EBITDA / 支払利息」と定義されます。これらの指標から、米国の債権者がキャッシュフローを重視していることがわかります。


出所:2022年1月19日 「事務局説明資料(経営上の重要な契約)」金融庁

金融庁の方針では、コベナンツが付いた借入金と社債の合計額が連結純資産の3%を超える企業には臨時報告書を提出させ、10%以上であれば有価証券報告書に記載を求める方針です。しかし、この方針に対しては、銀行から抵抗感が示されています。

銀行側からは、「企業に厳格な条件が課されていることが分かると、そうまでしないと融資を受けられないのかとの思惑が広がりかねない」といった意見が寄せられています。これらの意見については、そういった懸念が実際に起こるとすれば、それこそ他の債権者が企業の信用リスクを理解するために開示が必要でしょう。

いずれにしても、開示内容の具体的な範囲の調整が今後の焦点となるでしょう。米国では、企業が融資契約とコベナンツの内容を明示することが求められています。日本ではそのような開示を積極的に行う企業はまだ少ないと言われますが、財務制限条項(コベナンツ)の開示を促進する方針は、より透明性と信頼性がある金融市場を確立するための一歩と言えるでしょう。

この流れは、投資家が企業の信用リスクをより適切に評価するための有用な情報を提供し、企業の健全な財務活動を促す可能性を秘めています。金融庁の新方針が実施されることで、日本の金融市場が改善し、更なる信頼性と透明性を高めるための道筋が確立されることを期待しています。

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