昨日の日経新聞にフジクラが2011年3月期から投下資本利益率(ROIC)を事業の評価基準に加えるとありました。
事業継続の是非などを検討する目安は8%。同社のROICは税引き前利益を投下資本(株主資本+有利子負債)で割って算出しています。
分子と分母の整合性からすれば、分子は税引後営業利益が望ましいのですが、何か理由があるのかも知れません。
同社は事業別には8%を基準として設定。本社費用や研究開発費が加わる連結全体では5%強を目指すとしています。
役員によれば、「売上高利益率だけでは事業の実態を反映しにくく、資本コストの観点も必要だと考えた」とのことです。素晴らしいコメントです。
それでは、同社の資本コストの水準はどれくらいなのでしょうか。
2010年3月期有価証券報告書によれば、負債コストはざっくり1.8%(=支払利息÷2期平均有利子負債残高)です。
ブルームバーグによれば、フジクラのβは1.357ですから、リスクフリーレートを2%、マーケットリスクプレミアムを5%とおけば、株主資本コストは8.785%です。
同社の有利子負債と株主資本の比率は、ほぼ同じです。実効税率を40%とすれば、資本コストは、4.93%(=1.8%×(1-40%)×0.5+8.785%×0.5)と計算できます。
5%弱の資本コストに対して、連結全体での投下資本利益率で5%強を目指すというのは、あまりアグレッシブな目標ではないように思います。
ちなみに、1年を通してどれだけ企業価値を増やすことができたかをあらわす経済的付加価値(EVA)は次のように計算できます。
経済的付加価値(EVA)=投下資本額×(ROIC-資本コスト)
つまり、ROICと資本コストの差(しばしばEVAスプレッドと呼ばれます)の差がほとんどないということは、あまり企業価値を高めることができないということなんです。