一番の違いは、会計は「利益」を扱い、ファイナンスは「キャッシュ」を扱うということです。
たとえば、車の販売で言えば、500万円のエルグランドをお客様に販売(納車)した時点で売上高500万円と会計上認識されます。
それと同時にエルグランドを製造販売するのにかかった費用が仮に300万円とすれば、これもまた費用として会計上認識されるわけです。
簡単に言えば「利益」は売上から費用を引いたものですから、納車した時点で、利益は200万円あがるわけです。この結果をもとに、社長が社員にボーナスを払うのであれば、その会社は遅かれ早かれ資金繰りに息詰まるでしょう。
なぜなら、お客様から車の代金として、500万円のキャッシュを回収するしないにかかわらず、売上が計上されているからです。えてして、材料費や人件費などの経費は先に支払う必要がありますから、むしろ費用の分300万円キャッシュが足りない状況なのです。
黒字倒産という言葉は、聞いたことがあるでしょう。利益は出ているのに、キャッシュがなくて倒産するということです。これは、利益とキャッシュが違うということを知らないことから起こることなのです。
さらに、「利益」は会計基準や経営者の判断によって、ある程度調整することができます。
一方で、キャッシュの残高は調整ができません。どこの国の会計基準だろうが、経営者がどう考えようがキャッシュの残高は変わりません。「キャッシュは嘘つかない」と言われる所以です。
また、会計とファイナンスとでは、「時間軸」が違います。会計が扱うのは、あくまでも企業の「過去」の業績です。バランスシートや損益計算書、キャッシュフロー計算書の数字は、あくまでもの過去の数字です。
一方で、ファイナンスは「未来」の数字を扱います。将来、企業がうみだすキャッシュがどうなるか、ということが大切です。
ファイナンスが近年、重要だと考えられるようになったことには、理由があります。実は、経営者自身が常に「現在」と「未来」の二つの時間を考える必要があるからです。
言いかえれば、経営者は常に「現在の投資」と「未来のリターン」のバランスをとる必要があります。
投資なくして、将来のリターンがないのはあたりまえです。
そうかと言って、企業の将来のためだと言って過大な設備投資をすることは避けなくてはなりません。
一方で、目先のキャッシュフローの増加を重視して、将来の企業の存続を犠牲にしてもいけません。このように、経営者は、現在と未来のバランスをとることが必要になるわけです。口で言うのはたやすいですが、なかなかチャレンジングですね。
「利益」を扱うか、「キャッシュ」を扱うか、そして、「時間軸」が「過去」を向いているか、「未来」を向いているか、これが、会計とファイナンスの大きな違いと言えるでしょう。