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大手銀、リスク融資拡大

2017年2月9日付の日経新聞によれば、大手銀行が劣後ローンの融資を拡大、同ローンの昨年の総額は前年比8倍強に急増しているとのことです。

劣後ローンとは、負債と資本の特徴を併せ持った「ハイブリッド・ファイナンス」の一つです。通常のローンよりも返済順位が低く、自己資本に近い性格を持つことから、メザニンファイナンスと呼ばれることもあります。メザニンとは、中二階という意味です。負債と資本の真ん中ということです。

劣後ローンのほかに、負債なのに返済期限の定めがない永久債や、株式なのに議決権がない優先株式などもハイブリッド・ファイナンスです。

ところで、劣後ローンの融資を大手銀行が拡大している理由はなんでしょうか。それは、劣後ローンは利ざやがとりやすいうえ、協調融資を取りまとめた銀行には手数料も入るということが背景にあるようです。銀行側としても、通常のローンよりもリスクが高いことから、それに見合った高い金利を設定することができるというわけです。

それでは、企業側のハイブリッド・ファイナンスの需要が高まっているのはなぜなのでしょうか。

ひとつに、こうしたハイブリッド・ファイナンスは、格付けを取得する際に一定の条件を満たせば、その一部を資本としてカウントしてくれるといった特徴があります。したがって、資本の増強につながり、財務の安定性を損なうことがないことがあります。

また、普通株式と比較した場合には、増資による1株当たりの純利益の希薄化を避けることが出来るわけです。

例えば、資源安で財務の立て直しを迫られた三井物産は三井住友銀行などから3500億円を劣後ローンで調達しています。その目的をプレスリリース(2016年5月)では以下のように説明しています。


本ローンは、借入総額3,500億円、借入期間60年で初回期限前返済可能日は7年後、資本と負債の中間的な性質を持ったハイブリッドファイナンスであり、負債でありながら利息の任意繰延、超長期の返済期限、清算手続き及び倒産手続きにおける劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有しております。このため、三井物産では格付機関より資金調達額の50%に対して資本性の認定を受けられる事を見込んでおります。


企業としては、劣後ローンは支払順位が通常のローンよりも劣後することから、相対的に利率が高くなるデメリットがあります。それでも三井物産が劣後ローンで調達することを決めたのは、戦後初の赤字となった前期決算で目減りした自己資本を補いシングルAの格付けを保ちたいという思惑があったようです。

マイナス金利政策で、劣後ローンによる企業の調達コストは従来より下がっています。一方で、運用難に苦しむ銀行にとっては、まとまった金額の劣後ローンによる融資は格好の金融商品です。

このように企業と大手銀行との利害が今のところ一致しているわけですが、銀行間での競争が激化し、金利のダンピングも起き始めているという話も聞きます。銀行としてリスクに見合ったリターンという観点がなおざりになり、この道はいつか来た道とならぬことを祈るのみです。

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