2019年6月19日付日経新聞によれば、2018年度の上場企業(金融・日本郵政除く)の「投資CF」が51.6兆円と過去最高となりました。投資CFとは、企業が設備投資やM&Aに投じたキャッシュフローのことを言います。
事業活動で稼いだキャッシュフローをあらわす「営業CF」は米中の貿易摩擦の影響なのか、59.5兆円と7%減少しています。また、配当や自社株買いによる株主還元も増えています。配当は前期比2%増加の11.4兆円、自社株買いは5.4兆円と7割増加しています。つまり、株主還元は合計で16.8兆円です。
出所:オントラック作成
上図の通り、営業CF59.5兆円に対して、投資CFと株主還元を合わせた支出は68.4兆円です。稼いだ以上に資金を使っているため、日経新聞は「攻めの財務」と言っているようです。
確かに、日本企業の財務戦略は資金を「ため込む」から「使う」へとシフトしつつあります。しかし、「使う」ことが攻めていることにはなりません。将来の成長のために投資をするのと、株主に還元するのとでは意味合いが全く違うからです。
企業が成長するためには設備投資やM&Aに使うキャッシュが必要です。一方で、配当や自社株買いなどの株主還元というのは、企業から株主へキャッシュが出ていくことを意味します。つまり、成長と株主還元というのはトレードオフの関係にあるのです。
日本企業が攻めているかは、稼いだキャッシュフローである営業CF59.5兆円と投資CF51.6兆円のバランスをみることで分かります。FCF(=営業CF+投資CF)がプラスの状態である現状では、まだまだ攻めているとは言えないのではないでしょうか。
今回、営業CFが7%減少していたことも気になります。来年度以降、投資の成果が出て営業CFを増やすことができるのか、それとも営業CFがじり貧のまま企業が成長できず、手持ちのキャッシュを成長へ投資することなく株主還元していくことになるのか、今後の動きにも注目していきたいと思います。