企業によって、経営者によって企業価値を高めることを至上命題とする場合もあれば、株主価値を高めることを至上命題にする場合もあります。
そもそも、経営者は企業価値と株主価値のどちらを高めればいいのでしょうか。
企業価値は、誰にとっての価値かと言えば、企業への資金提供者である株主と債権者にとっての価値です。この関係は次式によってあらわすことができます。
企業価値=株主価値+債権者価値
株主も債権者も企業にとって資金提供者であることには変わりはありません。ただ、債権者は、利益の分配に関して、株主よりも優先順位が高く、債権者が受け取る分配もあらかじめ契約で決められています。
つまり、企業は債権者に対して、契約に基づいた利息と元本の返済を行うことで資金提供の見返りを提供するわけです。したがって、通常においては、債権者は事業収益の不確実性(=事業リスク)を負担することはありません。
そのため、債権者価値(=有利子負債価値)の変動は通常小さく、簿価と大きく乖離することはありません。
一方で、株主の資金提供に対する見返りは、企業を取り巻く利害関係者が分配を受け取った後の残りであるため、事業収益の不確実性(=事業リスク)がもろに株主の取り分に直結するわけです。
債権者価値の変動が小さく、ほぼ一定と考えられることから、企業価値の変動は、株主価値の変動であり、企業価値の最大化は、つまるところ、株主価値の最大化と同義なのです。