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自社株消却は意味がない

2019年3月17日付日経新聞によれば、2018年度の上場企業による自社株の消却が5兆3000億円強と過去最高を更新する見通しです。「消却」とは自社株買いで市場から取得した株式(金庫株)を企業が消滅させることをいいます。

NTTドコモは約1兆1500億円、ヤフーは2000億円相当を消却。また、東芝や昭和シェル石油など初めて自社株を消却する企業も45社にのぼるといいます。

以下の文章は日経新聞の記事(一部抜粋)です。


企業は金庫株を「M&A(合併・買収)の対価」「株式報酬として従業員に割り当て」「資金調達のために売り出す」などと活用することもできる。売り出しなどの形で市場に放出されると、自己資本は再び膨らみ、市場での株式需給も悪化しやすくなる。

一方、金庫株を消却してしまえば、こうした懸念はなくなるため、「前向きなニュース」として投資家に受け止められることが多い。多くの上場企業が自社株の消却に動いていることについて、専門家からは「市場を向いた経営を志向する企業が増えていることの表れ」(野村資本市場研究所の西山賢吾氏)といった声が出ている

出所:日経新聞(一部抜粋)


これは誤解が生じる文章だと思います。

金庫株を消却したところで、企業が新株を発行すれば同じことです。つまり、消却しないで金庫株を売り出すのと(消却後に)新株を発行するのとでなんら違いはありません。むしろ、登録免許税などを考慮すれば、資金調達の際に金庫株を再放出(売り出し)した方がコスト面で有利です。企業からすれば、金庫株を消却するという経済的合理性はないということです。

また、金庫株のあるなしは、EPS(1株当たり利益)やROE、さらには株主価値に影響を及ぼすことは全くありません。したがって、金庫株の消却を「前向きなニュース」と投資家がとらえるとしたら、それは投資家がわかっていないだけです。

 

※関連ブログ「ドコモ、月内に金庫株3000億円消却の勘違い

 

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