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WACC再考

つい最近のことです。こんな質問をもらいました。

WACC(資本コスト)って負債コストと株主資本コストの加重平均したものですよね。WACC以上のROICじゃないと企業価値を棄損するってことですけど、負債コストの方が普通は低いんですよね。株主の企業に対する要求収益率(企業にとっての株主資本コスト)よりも、WACCは低くなると思うんですが、それで株主は納得するでしょうか。」

ファイナンスを10年以上教えていて初めての質問です。皆さんだったら、この質問にどのように答えるでしょうか。

ちょっと具体的に考えてみましょう。A社の有利子負債は200億円、株主資本は400億円だとしましょう。債権者の要求収益率(負債コスト)は10%。株主の要求収益率(株主資本コスト)は20%だとしましょう。

債権者と株主の要求にこたえるため、A社が年間いくら稼がないといけなかといえば、債権者は、200億円の融資に対して、10%の収益率ですから年間20億円を要求していることになります。利息は節税効果がありますから、税率を50%とすれば、実質的なA社の負担は、10億円(20億円×(1-50%))となります。

一方、株主は400億円の投資に対して20%を要求していますから年間80億円です。つまり、A社は合計で、年間90億円を稼ぐ必要があるます。数式で表せば次の通りです。

90億円=200億円×10%×(1-50%)+400億円×20%

この90億円の利益を稼ぐのにA社に債権者と株主が投下する資本は、有利子負債200億円、株主資本400億円の合計600億円ですから、要求される収益率は15%(90億円÷600億円×100)です。これこそがWACCです。

これでお分かりですね。WACCが15%だからと言って、株主の要求する収益率20%に応えていないということにはならないのです。

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