米国の株式市場で活況を呈しているのがSPACです。SPACとは「特別目的買収会社」の略称で、Special Purpose Acquisition Companiesの頭文字をとったものです。未上場企業を買収するのを目的として、上場するシェルカンパニー(ペーパーカンパニー)と言えます。
SPACは買収企業が決まらないうちに上場することによって株式市場から資金調達するため、ブランク・チェック(金額欄が空白の小切手)カンパニーとも呼ばれます。通常2年で買収企業が見つからなかった場合は一定の金利をつけて投資家に返金する仕組みとなっています。投資家からすれば、債券的な部分と株価上昇期待がある株式的な部分とを合わせもった金融商品ということになります。
7月22日には米国の投資家ビル・アックマン氏が立ち上げたSPACが40億ドル(約4,200億円)という過去最大の資金調達に成功し話題になりました。今年は8月の段階で、すでに236億ドル(約2兆5000億円)を調達しており、過去最高だった2019年を大きく上回っています。
ただ、買収前のシェルカンパニーであるSPACの価値に根拠はありません。ユニコーン買収の思惑だけで株価が乱高下するSPACは、まさにバブルと背中合わせです。東京証券取引所も2008年には、SPACの上場を解禁しようとしたことがあります。ところが、一定の要件さえ満たせば上場できる米国との違いは埋まりませんでした。SPACが上場後にどんな企業を買収するか分からない状況の中で、取引所として上場を認められないという判断は極めて真っ当なことだと思います。
各国の中央銀行の金融緩和策であふれたマネーの受け皿となっているSPACの存在を米国株式市場の底力とみるか、人間の飽く事なき欲望の現れとみるか、評価は分かれるところでしょう。