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割り勘計算と損得計算

意思決定とは選択することです。そもそも選択肢がなければ、私たちは意思決定する必要はありません。ここにAかBかという2つの選択肢があるとしましょう。何を基準に選択すれば、いいのでしょうか。それは会計上の利益ではなく、キャッシュフローに着目することです。

利益計算の目的は3つあります。税金計算と配当計算と業績評価です。利益計算のためには、かかった費用を期間毎、製品、商品ごとになるべく公平に配分する計算が必要です。しかし、こうした公平性を重んじた、いわゆる割勘計算では意思決定はできないのです。具体的にみてみましょう。

あなたと友人Aは、引越しに伴いトラックをレンタルしたいと考えています。トラック1台のレンタル料金は、1日60,000円の固定料金に加えて、走行距離1キロにつき200円という走行料金がかかることになっています。あなたの引越し先までは往復でも50キロで半日もあれば十分です。一方、友人Aの走行距離は100キロとなるものの、いずれにしてもレンタルするのは1日で十分だとします。それでは、あなたと友人Aはいくらずつの料金を負担すればいいでしょうか。

結論から言えば、公平な負担額を計算する唯一絶対な方法は存在しません。普通は、変動費(=走行料金)のほかに固定費(固定料金)を加え、1キロ当たりのコストを求め、それにあなたと友人Aのそれぞれの走行距離を掛けてコストを計算するでしょう。自分が走った走行距離の分(=変動費)だけを負担することになった場合、固定料金(=固定費)が宙にういてしまうからです。

1キロ当たりの平均コストを計算してみましょう。

したがって、これをあなたと友人Aの走行距離に応じて配分すると、
あなた:600円×50キロ=30,000円
友人A: 600円×100キロ=60,000円

もしかしたら、こんな方法もあるかもしれません。固定料金60,000円は割勘にしてあとは、走行距離に応じて支払う。
あなた:30,000円+50キロ×200円=40,000円
友人A:30,000円+100キロ×200円=50,000円

もしかしたら、この計算方法ではあなたが納得しないかもしれません。あなたはこんな提案をするかも知れません。走行距離に応じて、固定料金を按分計算しよう。
あなた:

友人A:

これは結局、1キロ当たりのコストを計算していることと同じであることに気づいたかもしれません。

あなたの友人Aは、総額を割勘にするという提案をしてくるかも知れません。つまり、総額が90,000円ですから、45,000円ずつということです。友達思いのあなたは、承諾するかも知れません。

このように「公平性」という原則にたって、二人の間でいくらずつ負担するかという問題には、理論的な正解はないのです。そして、利益はこうした「公平性」を重視した割勘計算によって算出されているため、意思決定には使えないのです。先ほどのケースの続きをみてみましょう。

あなたと友人Aは予定より引越しの作業を早く終えることができました。トラックを返す時間までには十分余裕があります。そこに二人の共通の友人Xがやってきて15,000円支払うので50キロ使わせて欲しいと言ってきました。あなたと友人Aはこの申し出を承諾するか意思決定する必要があります。50キロ使うのですから、あなたと同じ30,000円を負担させるべきでしょうか。

先ほどと同じように、1キロ当たりの料金は次のように計算できます。

したがって、それぞれの距離の応じた負担額は次のようになるはずです。
あなた:500円×50キロ=25,000円
友人A: 500円×100キロ=50,000円
友人X: 500円×50キロ=25,000円

3人が公平に負担すると考えた場合、これは1つの解とはなり得ます。しかし、友人Xに15,000円で貸すかどうかという意思決定は、公平性というよりも、どちらがあなたと友人Aにとって有利かという損得の話です。この場合、友人Xに貸した場合と貸さない場合のキャッシュフローの増し分に注目する必要があります。

友人Xが50キロ使うことによって、レンタカー会社に支払う料金は、10,000円(=200円/キロ×50キロ)増加します。これに対して、友人Xは15,000円支払うと言っているわけですから、あなたと友人Aにとってみれば、5,000円増えるわけです。このように公平性を前提とした割勘計算は意思決定に使えません。意思決定は、損得の計算です。あくまでも、キャッシュフローの増し分に着目する必要があるのです。

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