昨日は、日銀による円売り為替介入が行われました。
2010年8月に経済産業省が行った「円高の影響に関する緊急ヒアリング結果」によれば、1ドル85円の円高が継続した場合、製造企業のうち4割が「生産工場や開発拠点等を海外に移転」、6割が「海外での生産比率を拡大」と回答しています。
ところで、円高が進むとなぜ、上記のように海外移転、海外生産という話になるのでしょうか。
たいてい、日本国内の高い人件費やインフラコストではやっていけないということが言われます。
もちろん、それもあるでしょう。
実は、あまり、注目されることはありませんが、通貨のマッチングによる為替変動リスクの低減という側面もあるのです。例えば、自動車メーカーの例を取り上げると、日本で車を生産し、米国に輸出、販売した場合には、売上はドル建て、一方でコストは円建ての支払いになります。
要するに、円建てのコストを支払うためには、ドルを円に変えなくていけない。このときに円高だと具合が悪いわけです。
そうです。売上とコストの通貨を同じにすれば、為替変動リスクを低減することになるのです。
ドルで売り上げ、ドルで払う。ユーロで売り上げ、ユーロで払う。このようにすれば、利益の部分は最終的に外貨建てで残ってしまいますが、確実に為替変動リスクを低減することができます。
多国籍企業では、通貨別にキャッシュインフローとキャッシュアウトフローの額を予測し、最終的に通貨ごとにどれだけのポジションを持つことになるかをモニタリングしているはずです。
つまり、インフローとアウトフローの差額こそが為替変動リスクにさらされていることになるからです。