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日本企業の収益性の低さの要因とは

かねてより、国際的に日本企業の収益性の低さが課題とされてきました。2014年8月に発表された「持続的成長への競争力とインセンティブ―企業と投資家の望ましい関係構築」(通称、伊藤レポート1.0)では、日本企業は最低でもROE8%を目指すべきとされました。2019年のデータによれば、TOPIX500の対象企業のROEの水準は10.1%となっています。改善傾向にはあるものの、米国企業のROE30.8%はもちろんのこと、欧州企業のROE17.5%と比較すると依然として見劣りします。デュポン分解するとやはり、日本企業の収益性(売上高純利益率8.5%)の低さに目がいきます。

出所:「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第23回)会議資料「資本効率/経営資源の配分等

日本企業の収益性の低さは、日本企業がリスクをとって成長投資を行っていないと語られることがありますが、果たして本当なのでしょうか。今回は、『企業統治制度改革と日本企業の成長』の第12章「日本企業の低パフォーマンスの要因:国際比較による検証」(井上光太郎・蟻川靖浩・長尾耀平)を紹介したいと思います。

この研究では、過去の企業業績に基づいて「リスクテイク指標」を計算し、利益率との関係を検証しています。「リスクテイクしたか、どうか」をどのように定量化しているのでしょうか。この研究では、個別企業のROAと業界中央値ROAとの差をとって標準偏差で表しています。

これは、同業他社と異なる投資行動をリスクテイクと考えていることになります。つまり、他社が投資活動を控えているときに、投資を実行すれば、資産が増えることになりますから、一時的にROAは、業界平均より下がるでしょう。一方で、将来的にその投資が成功して、高いリターンを生み出せば、業界平均のROAよりも高いROAになるはずです。いずれにしても、業界平均値との間にバラツキが生じるわけです。それこそ、同業他社と横並びの行動しかとっていない企業は、業界平均値並みとなるはずです。


出所:コラム「日本企業のパフォーマンスはなぜ低いのか?」齋藤 卓爾 慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授

上図の横軸はこのリスクテイク指標、縦軸はROAの平均値となっています。図の右肩上がりの回帰直線が示すように、リスクテイクしている国(企業)は、ROAも高くなっていることがわかります。つまり、高収益を上げるためには相応のリスクテイクが必要なのです。日本企業(赤い囲み)は、リスクテイクについても各国の企業と比較すると最も低い値となっていることがわかります。さらに、日本企業が、リスクとリターンの関係を表す回帰直線の下に位置することから、そのリスクテイクに見合うリターンすら獲得できてないということがわかるのです。

リスクテイクすべきとは言うものの、リスク(不確実性)を嫌うのが人間でしょう。この人間の本能(恐怖心など)に抗いながらも、積極果敢にリスクテイクしなければならないのが経営者なのです。

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