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株価指標PBRの意義と限界

東京証券取引所は、PBRが1倍を下回る上場企業に対して改善策を開示・実施するよう要請しました。このような取引所の要請は世界的にも異例とされています。PBR(株価純資産倍率)は、次のように定義されます。

大日本印刷は、2023年2月に新中期経営計画策定に向けた「DNPグループの経営の基本方針」を公表し、その中でROE10%を目標に掲げ、PBR1.0倍以上を早期に達成すると宣言しました。また、3月には過去最大の自社株買い(上限1000億円)を発表しました。その影響もあってか、大日本印刷の時価総額は3月上旬に一時約1兆2500億円と、前年末の約8400億円から5割近く増加しました。

本日(2023年6月5日)の東京株式市場では、日経平均株価が大幅に上昇しました。一時的には500円以上、上昇し、32,000円台まで上昇する場面もありました。これは33年ぶりの高値だそうです。市場の勢いによって、自社では特に何もしなくてもPBRが改善するのを見て、溜飲を下げた経営者もいたことでしょう。

しかし、そもそもPBRという指標には意味があるのでしょうか。PBRの分母である純資産は、企業が保有するすべての資産額から負債額を差し引いたものです。つまり、PBRが1倍以下の企業は、純資産と比較して株式を買い取るために必要な金額(時価総額)が少なくて済むため、事業継続よりも清算する方が良いと言われます。

しかし、貸借対照表(バランスシート)上の資産が実際にその金額で現金化できるかどうかは疑問です。いまや、富の源泉は、有形資産のような物理的な資産から知識やデータなどの無形資産へと変化しているのです。米国S&P500企業の時価総額のうち、無形資産による価値の割合は40年間で17%から84%に増加しました(2019年9月17日付日経新聞)。しかし、バランスシートに計上される無形資産は、実際の価値を正確に反映しているわけではありません。

会計の世界では、価値を正確に把握することができない限り、その価値を認識しません。例えば、ナイキはアパレル企業のブランド力ランキングで7年連続首位を獲得するなど、非常に貴重なブランド価値を持っています。しかし、その価値を正確に測定することはできないことから、ナイキのバランスシートにはその価値は計上されていません。

現代では、企業の競争優位は無形資産によって決まる時代です。投資家の関心事は、企業がどのような無形資産を所有しており、それが企業価値にどのように貢献しているかです。しかし、その情報が財務諸表に必ずしも反映されているとは限りません。会計は限界があることが明らかになっている状況で、PBRという指標がどれだけ意味を持つのか疑問です。

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