最近、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の業績不振がメディアで取り上げられることが増えているように感じます。実際に、メタ(旧フェイスブック)やアマゾン、グーグルは、1万人以上のレイオフ(一時解雇)を発表しました。ただ、これらの企業の業績不振を、2022年10月~12月の最終利益(当期純利益)の減少を根拠に解説していたりします。下の図はあるニュースサイトに掲載されていたもので、4社とも2022年10月~12月の決算で最終利益が前年同期間と比較して減少したことが示されています。
しかしながら、利益だけを見て業績を議論するのは適切ではありません。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、「2004年度の株主への手紙」の中で、フリーキャッシュフローが究極の財務指標であることを述べています。「企業価値は、企業が将来的に生み出すキャッシュフローの現在価値であり、将来の利益の現在価値ではありません。運転資本や設備投資も重要な要素であり、成長に必要な投資が、投資から得られるキャッシュフローの現在価値を上回る場合、利益を増やすことがかえって株主価値を損なうことになる」とベゾスは説明しています。
試しに、4社の2022年10月から12月のフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)を見てみましょう(上図)。メタ以外は、フリーキャッシュフローが増加していることがわかります。また、アマゾンは、最終利益は大幅に減少しましたが、フリーキャッシュフローは前年同期比で93%も増加しています。もちろん、短期的なフリーキャッシュフローの増減だけで企業の業績を判断することはできません。この3か月は、たまたま投資キャッシュフローが少なかった可能性もあるためです。
そこで、GAFAの8年間のフリーキャッシュフローの推移を見てみましょう。各社、フリーキャッシュフローの増加の程度は異なるものの、いまだに上昇トレンドであることがわかります。確かにこれらの数字は、2022年度の実績に基づいており、将来のフリーキャッシュフローの動向を予測したものではありません。しかし、メディアが取り上げる足元3か月の損益だけでGAFA企業の業績が不振であると断言するのは早計であることはお分かりでしょう。
企業の業績は、長期的な視野で評価する必要があります。それには、フリーキャッシュフローの金額と傾向を見ることが重要です。ジェフ・ベゾスは、「上場時(1997年度)の株主への手紙」でこうも言っています。
When forced to choose between optimizing the appearance of our GAAP accounting and maximizing the present value of future cash flows, we’ll take the cash flows.
(一般会計原則に基づく財務諸表の見栄えをよくするか、将来のキャッシュフローの現在価値を最大化するかを迫られたときはキャッシュフローを優先します)
We will continue to make investment decisions in light of long-term market leadership considerations rather than short-term profitability considerations or short-term Wall Street reactions.
(私たちは短期的な利益の追求やウォールストリートの反応よりも長期的なマーケットリーダーシップをとるために継続して投資を行います)
アマゾンのように成長する分野への投資に注力し、短期的な利益よりも長期的な視野でビジネスを展開しようとする企業もあることがわかります。利益だけで企業の業績を評価することはできないこと、そして、長期的な視野で今後のフリーキャッシュフローがどうなるかを評価することが大切であることを私たちは肝に銘じる必要があります。
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