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レーダーチャートでみるGAFA

2019年12月4日付日経新聞「アップルは借金上手」に掲載されたGAFAのレーダーチャートは各社の成長ステージや戦略の違いがよく理解できるとても興味深いものでした。

これは、売上高成長率や有利子負債、配当などの5年平均をGAFAの5年平均と比べた割合をレーダーチャートにしています。GAFAの平均を100とした場合の割合を示していて、グレーの中心の円よりも外にあるほど相対的に大きいことを示しています。

出所:2019年12月4日付日経新聞「アップルは借金上手」

まずはアップルです。全般的にGAFAの平均を上回っているのがわかります。一方で、売上高成長率と自己資本比率が平均より低くなっています。成長は鈍化、事業のステージは成長ステージから成熟ステージに移行しつつあるように見えます。実際のところ、19年9月期の売上高はマイナス成長でした。タネをまいて育てたものを刈り取る時期にありますから、キャッシュがどんどん入ってくるわけです。営業キャッシュフローの5年平均はGAFA平均の2倍になっています。

さらに自己資本比率は低いというのは、負債の割合が多いことを意味します。実際、有利子負債の金額と支払利息がGAFA平均の3倍になっています。そして、配当総額と自社株買いが突出しています。本業から得られた営業キャッシュフローと社債発行で得たキャッシュを配当や自社株買いなどの株主還元につなげていることがわかります。有利子負債を増やし、自社株買いによってデットとエクイティの比率を変化させ、資本コストを下げていく。まさにファイナンスのお手本のような財務政策をとっていることがわかります。

それでは未来投資に関してはどうでしょうか。研究開発や設備投資はGAFA平均と同じか、やや上回る水準です。有価証券取得は次の成長につながるようなベンチャー企業に投資をしていればいいのですが、単なる運用目的となると心配です。アップルが新たな成長カーブを描くための次の一手をどのように考えているか興味あるところです。

株主還元を進めるアップルに対し、創業以来22年間配当を支払ったことがないのがアマゾンです。いまだに未来投資をし続けています。まさに成長ステージにあるような資金配分をしているのがアマゾンです。レーダーチャートでは研究開発費と販売費がGAFA平均を上回っています。物流施設や配送を自社で担うアマゾンは他の3社と比較して、人件費などのコストがかかると言われています。研究開発費は18年12月期に約3兆2000億円と世界首位です。これは我が国首位のトヨタ自動車の3倍の規模です。

グーグルを傘下に持つアルファベットのキャッシュの使い道は、設備投資と有価証券の取得、研究開発でしょうか。日経新聞には、動画共有サイト「ユーチューブ」をはじめ膨大なデータの蓄積を支えるデータセンターへの設備投資を行っているとあります。また、潜在的なライバル企業を将来の競合になる前に積極的に買収(有価証券投資)しているようです。先日、ニュースになった量子コンピューターなど先端の研究開発にも資金を振り向けています。有利子負債はほとんど無いのも特徴です。

フェイスブックの特徴は、売上高成長率がGAFA平均の2倍あるということでしょうか。フェイスブックの売上高は約6兆円(18年12月期)です。アップル(約28兆円)やアマゾン(約25兆円)、アルファベット(約15兆円)と比較して売上高がまだ小さい分、成長の余地が残されているのかも知れません。ちなみにフェイスブックは無借金会社です。

GAFAとひとくくりにして議論しがちですが、こうしてみると各社各様であることがよく分かります。やはり、定性的な部分だけでなく、定量的な分析をすることの大切さをこのレーダーチャートから再認識しました。

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