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セブン&アイとバリューアクトの対立

2023年4月25日、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)「バリューアクトからの4月20日の手紙に対する取締役会の見解」を発表しましたが、その内容はバリューアクトが求めていたものではありませんでした。本記事では、セブン&アイの回答とバリューアクトの反応について解説します。
※参考ブログ「セブン&アイ、収益構造の改革求める株主提案受ける

セブン&アイがバリューアクトの提案に対して回答した内容のポイントは以下の通りです。

・会社の8人の独立社外取締役は、中期経営計画の更新とグループ戦略の再評価を考慮し、コンビニエンスストア事業への投資を推進し、経営資源の集中と最適なキャピタル・アロケーションの実行にコミットしている。

・2022年に刷新された過半数の社外取締役を含む取締役会は、変革を監督し、独立社外取締役だけで構成される戦略委員会が進捗管理と中長期的な戦略を検討していく。

要するに現状の経営陣とガバナンス体制で全く問題ないと言っているわけです。肝心のバリューアクトの質問に対しては全く回答していません。バリューアクトの9つの質問については、公開資料「バリューアクト、セブン&アイ・ホールディングスの取締役会からのレターに返答」を参照してください。ここには、セブン&アイの社長が、イトーヨーカ堂の上場を検討する可能性を示唆していることが取り上げられています(2023年4月24日付日経新聞「ヨーカ堂は猶予3年、「外来」と「外圧」のセブン50年」)。しかし、別のメディア(2023年4月27日付東洋経済記事「セブン社長が大反論「コンビニは分離しない」)でイトーヨーカ堂の分離に反対するという矛盾した発言がされていたことも指摘されており、戦略委員会を通じた意思決定が本当に行われているのか疑問が投げかけられています。

「セブン&アイの株主価値を最大化するためには、誰が経営を担うべきか?」これこそが株主の最大の関心事でしょう。この命題を株主が判断するために、取締役会は適切かつ十分な情報を株主に提供する義務があります。そもそもが、セブン&アイの経営陣はバリューアクトを敵対視しているように思います。信頼関係を築こうしているようには思えません。そのような関係では建設的な議論など生まれるはずもありません。

オリンパスの社外取締役であり、日本たばこ産業(JT)で約2兆円規模の買収を手がけた元副社長の新貝康司氏のインタビュー記事が日経ビジネスに掲載されました。オリンパスの社外取締役として活躍するバリューアクトのデイビッド・ロバート・ヘイル氏に対する新貝氏の印象がよくわかります。

新貝氏はヘイル氏について、「彼は素晴らしい社外取締役であり、物事を考える際の枠組みにおいて、問題がないかどうかを常に検討している」と評価しています。さらに、「ヘイル氏は、他の人が気づいていないか、気づいているものの議論が偏っているような場合に、冷静に異なる視点を提案する人物だ」と述べています。

アクティビストには大声で主張するイメージがあるかもしれませんが、新貝氏はヘイル氏について「彼は静かに重要な意見を述べてくれる。彼らはいわゆる『アクティビスト』ではない」と語っています。そして、ヘイル氏が取締役会にもたらしているのは多様性の効果だと指摘。多様性というと性別や国籍などをイメージしがちですが、新貝氏は「本当に大切なのはタスク型の多様性で、視点、思考やアイデア、スキルの多様性だ」と強調しています。

おそらく、セブン&アイの取締役会に必要なのも、このタスク型の多様性かもしれません。新貝氏はサッカーに例えて、「子供のサッカーでは全員がボールを追いかけてしまい、相手から予期せぬカウンターを受けてゴールを決められることがありますが、ヘイル氏はそうならないような発言や質問をするのです」と述べています。セブン&アイの取締役会は、バリューアクトを敵対視するのではなく、その提案に謙虚に耳を傾ける姿勢も必要なのではないでしょうか。なぜなら、バリューアクトの提案そのものは議論の余地はあるかもしれませんが、決して理不尽なものではないからです。

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